『五つの峠 鑑賞会』を開催しました

むらがるプロジェクト映画上映会_五つの峠

‘21.6.29(火)、泰阜村誌分科会のスピンオフ企画「五つの峠 鑑賞会」を開催しました。

上映会開催の経緯:
むらがるプロジェクト企画で「ふらっと大畑」という地元歩きイベントを行った際に、ガイド役を務めてくださった地元の先輩から”泰阜を舞台にした映画が在る”とお聞きし、みんなで見てみよう!となりました。

ふらっと大畑の様子はこちら

上映会には泰阜の歴史に興味のある10名程があつまり、約1時間半、映画と交流を楽しみました。

映画「五つの峠」とは

”五つの峠” は泰阜村の栃城(とちじろ)地区を舞台に昭和32年(1957年)に作られた映画。当時の日本に6,000箇所以上あったと言われる「僻地」での暮らしや教育を伝える目的で制作されたようです。

栃城地区の子供たちが学校に通うために”五つの峠”を越えて登下校などしていたことから、このようなタイトルになったのかなと思います。

昭和32年といえば、終戦から数年ですので日本が混沌としていた時代。

そのような時代に泰阜では教育に力を入れる取り組み(村誌より:教育委員会設立、学校PTA設立、家庭訪問開始、母親教育開始など)が始まっています。

そういった時代背景を感じつつ、当時の泰阜を知る貴重な資料として映画を鑑賞しました。

それにしても映画になるほどだったということは、全国の”僻地”の中でも泰阜村の栃城地区は突出していたということでしょうか。上映中、ナレーターの方が栃城地区を「辺鄙(へんぴ)なところ」と連発していたのがちょっと気になりましたが。。。

当夜は、同じく栃城地区を舞台に作られた他作「とんじろ物語(平成18年)」も同時上映され、栃城のような山深い地区になぜ人が住むようになったのかといった経緯を知ることができました。

※栃城地区は、年貢代わりに国に納めていた榑木(くれき)の産出地として人が入り、やがて住むようになった地区、との紹介でした。

当時を知る先輩方の生々しい逸話

今回の上映会、地元の当時を知る先輩が2名参加してくださいました。

ただ映画を見るだけでは「当時はそうだったんだね〜」といった感想で終わっていたかもしれません。

先輩方の生々しいお話を聞き、映画からはわからないこと、映画以上に衝撃的だったことなどをリアルに感じながら素敵な時間を共有することができました。まさにむらがるプロジェクトの理念「面白がる」に通ずる活動です。

戦後の日本では小学生が働くのは当たり前で、栃城地区に限らず、炭焼きや縄編み、田畑を手伝ったということで、子供も家計の担い手:「一人前の労働力」として暮らしていたんですね。

映画「五つの峠」で衝撃だったのは、やはり峠越えのシーン。

子供たちは、焼いた炭を登校がてら”五つの峠”を越えて担いで行くわけです。炭一俵がだいたい15kgといいますから、小学生が保育園児をひとり背負って整備が行き届かない山道(峠)をひたすら歩くようなもの。当時、それが当たり前だったといえショッキングな内容でした。(中学生にもなるとは三俵(45kg)担いだそうです・・・絶句。)

学校から帰れば炭焼きの手伝いや縄編みなど、生きるために家族が結束していたことがよくわかりました。

また、「NHKから贈られたラジオを地区の皆で聞くことが唯一の娯楽だった」(五つの峠より)なんて、現代の僕らには想像もできませんね。

上映会開催の収穫

自分が住む土地の時代背景を知ることにどんな価値を感じるかは人それぞれですが、少なくとも「どういった暮らしがあった後に、今の自分が在る」ことを知るキッカケとして、非常に良い勉強会になりました。

”便利で豊か” が当たり前になったこの日本で、「昔は大変だった」という観点で歴史を語っても当時を知らない現代人には響きません。「炭を背負って峠を越える」という非現実を想像できないからです。

個人的な所感になりますが、今回の上映会開催の一番の収穫は、「この土地が成長していく過程を知る元気な先輩が居る」ことを知れたことです。

そういった先輩方からもたらされる情報は得難いものです。

たとえば、

「当時から炭を焼いている炭焼職人がおり、その方の焼いた炭はJAで購入できる」

といった情報です。

知らなければホームセンターなどで買ってしまう海外製の安価な炭ですが、「自分が価値を感じるところにお金を使いたい」という層にとっては有益な情報です。

エシカル消費や地産地消がブームですが、そういった応援消費はなかなか情報として提供されていないと実践するのが難しいですからね。

先輩方の話を聞いていると、映画や文章にならなかった部分に”歴史のうま味・面白味” が隠されているような気がしてなりません。そんな先輩方の「話の場」をどうプロデュースしていくか、、、これからのむらがるプロジェクトのアウトプットの1つになりそうです。

そう「推し村民を囲む会」企画へ繋がりそうなインスピレーションを得て上映会は幕を閉じました。

希望があれば、こういった上映会は何度実施しても良いですね^^全村の光回線敷設が完了すればオンラインでの上映会も可能になるかと思います。

泰阜を離れている地元出身者や、泰阜に興味を持っている方にもアプローチできるといいな。