オンライン勉強会「福祉の村”やすおか”」を開催しました

都会的な視点から「何もない」と言われ続けてきた我が泰阜村ですが、医療・福祉の分野では”やすおか”の名を全国区にした先進的な取り組みがあります。

それは「在宅医療(在宅福祉)」という考え方に基づいた、医療サービスのイノベーションでした。

むらがるプロジェクト第6回目のオンライン勉強会(2021/7/24開催)は、泰阜の地が「福祉の村」と呼ばれるようになった経緯を、昭和60年代当時の取り組みを知る方、実際に在宅福祉に関わられた方を中心にお話をお聞きしました。

日頃、福祉や医療に関わりがないメンバーにとっても、福祉の村”やすおか”という文脈を知る上で、大変貴重な時間となったと思います。

浮かび上がる泰阜村の個性

泰阜村に住んでいると、”福祉の村”というキャッチフレーズを聞くことは度々ありました。

確かに、医療費は安く、特養老人ホーム「やすおか荘」や「悠々」などの施設があり、子供にも高齢者にも障害を持たれた方にもやさしい村というぼんやりしたイメージはあります。

多くの村民の方が同様なイメージを持たれているだろうと想像します。

しかし、これらのイメージがどのような背景で作れらるようになったのか、その経緯を知る機会はほとんどありませんでした。

実際には”知る機会”はいくらでもあったのかもしれません。しかし、僕のように医療や福祉をそれほど身近に感じていなかった層には、積極的に村の医療・福祉について学ぼうという意識は薄かったのでは無いでしょうか。

特に福祉と聞くと、「お世話になるのはまだ先だよね」という感覚、若い世代には多いのでは?と感じています。

今回、ご縁をいただき「福祉の村”やすおか”」というテーマで勉強会を開催することになり、関係される方と事前協議するなかで強く感じたことは、「泰阜村は日本の在宅福祉の分野でパイオニアだ」ということ。つまり、誇れる強烈な個性が在る、ということです。

泰阜のように自然豊かな地域は日本各地にいくらでもありますが、(当時の)国の方針と戦ってまで医療・福祉の分野に革命を起こした地域は多くないでしょう。

それほどのエネルギーが自分たちが生きるこの地から発せられたこと、もっと誇っていいと思うのです。そして個性としての泰阜村の福祉の背景を、村民自身が”自分ごと”として知る機会がもっと必要だとも思いました。

この村で在宅福祉が始まったのはおよそ30年ほど前ですが、未だに医療・福祉の関係者が全国から研修・視察に来るそうです。

たとえ医療・福祉に関心が無くとも誇れる個性(強み)だと思いませんか?

自分の故郷を語れるって、すごく大事なことだと思うのです。

ひとりの医師が在宅福祉を変えた

泰阜村が”福祉の村”として全国に知られるようになった背景には、ひとりの医師の存在があります。

昭和59年に泰阜村に赴任され、診療活動をされていた網野 皓之医師です。

現在40歳以上の村民には、懐かしいお名前かと思います。

網野先生は、”看護師や介護士が個人宅に上がり、身の回りのお世話をするなど考えられない時代”に在宅福祉を提唱され、身を以て実践されました。

勉強会当夜は、その網野先生を支え、同じチームとして在宅福祉への足がかりを作られた方や、網野先生の関係者の方、実際に網野先生の活動(各地区でのリハビリなど)に参加された方をお迎えし、お話を聞くことができました。

前回の「映画鑑賞会」の折にも感じたことですが、当事者の言葉にはエネルギーがあります。

30年前の業界の常識を破ることがどれほど苦難の道だったのか、今となっては想像することもできませんが、たぎる熱意と、理想を完遂する覚悟あっての行動だったのだということが、お話いただいた方々から伝わってきました。

網野先生の「人を巻き込む力」、そしてその時団結したチームの力、先生の考えに賛同し舵を切った行政、様々な関係者が横断的に1つの方向性に向かった、まさにワンチームだったのだろうと想像します。

奇しくもコロナにより「在宅」というワードが注目されました。今後も医療も福祉も在宅で取り組まなければならない状況が増え、そしてそれが続くと予想されます。

もちろん、在宅だけが正解ではありませんが、泰阜村が先進的に取り組んで結果を出してきた在宅福祉・在宅医療が、30年の時を経て、世の中に還元されるタイミングが来たのかも知れません。

本当は本稿において”福祉の村”の全貌を明かせればよかったのですが、約1時間の勉強会では、泰阜の福祉について理解を深めることは難しい・・・というのが実情です。

そして”泰阜=福祉の村”の背景を知ったとしても、それをどう”自分ごと”と捉えてよいのかもわかりません。僕自身も、不勉強且つ理解不足のなか、泰阜の福祉についてまだ語れることが無い状態です。

よって、今後も継続的にこのような”当事者に登場いただく”勉強会を実施し、皆さんともに学んでいきたいと考えています。

伝えたい人がいて、知りたい人がいる。

あとは場を作るだけですね。むらがるプロジェクトは場を提供していきます。

勉強会の感想

今回の勉強会「福祉の村”やすおか”」に参加いただいたメンバーからの感想を一部シェアします。

  • 泰阜村の先進的なところを外からの視点で気づかせてもらえるのはありがたい。
  • この先進的な取り組みを地域の若者と結び付けられたら更におもしろいと思った。
  • 実際に関わられた方々のお話をお伺いできたことで、事実として理解してきたことへの現実感や奥行き感が増したように感じます。
  • 当時の様子や網野先生のお人柄、いろいろな取り組みが始まった経緯などは知る機会がなくて、勉強会では当時の様子が目に浮かぶようで本当にうれしく、勉強になりました。
  • 「福祉の村」始まりの時の様子は、ぜひ、泰阜村の役場の人たち、福祉関係の人たちはもちろん、村の人たちみんなで共有し続けていきたいことだな…と思いました。

今回の村誌クイズ

泰阜村 村誌クイズ

今回は泰阜村の医療・福祉についてのテーマでしたので、村誌より、泰阜村診療所にまつわる出題としました。

参加者10人中正解者はゼロでした。

当時の時代背景を知らないと正解は出せないと思いますが、今から90年前の話しですから、ちょっと難易度高すぎましたね〜^^;

次回むらがる勉強会予定

次回は、

2021/08/27(金)20:00〜 「泰阜村と経済」

としていますが、テーマは変更するかも知れません。

「環境」をテーマにしてもいいかな?と思ってます。

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