2019年2月にカオハガン島を訪れて以降、メンバーで集まり会議をしてきました。
村の未来について話し合う中で、「村のことを知って楽しむ企画がしたい!」との案が挙がり、田本地区の井水路を歩く計画が実現しました。
10月某日。
朝9時に田本のあさぎり館に集合し、車で井水路の入り口まで向かいます。
みんなで気合を入れて、ウォーキングスタートです。
今回は、カオハガン島研修メンバー4名が参加し、村の方2名に案内してもらいました。
田本地区はその名のとおり、山あいに田んぼが広がる集落で、
春の田植えや秋の「はざかけ」は、これぞ日本の原風景という美しい光景です。
しかし、この中山間地域でコメ作りを行うためには、水を確保するための苦難の歴史がありました。
地元の方から、当時のお話や植物のことを教えてもらいながら山道を進みます。
昔の方が井水路を作ったときの話やご自分の生きてこられた歴史など様々なことを話してくださいました。
このような橋がたくさんありました。この下を水が通っています。
木が倒れていたり、落石もあったりしました。
以前、落ちて亡くなられた方もいたそうで、花が供えてありました。
今は大分歩きやすい道ですが、危険も伴う場所なので、
よく知っている方と複数で、気をつけて行くようにしなければと思いました。
歩き進めると、水路の断面を見ることができるスポットを発見。
現在の水路はビニール製のパイプをコンクリート道の下に通すものです。
初めて水路を開拓した安政の時代は松の板を使った木樋で水を引き、
その後コンクリート、コールゲート、そして現在の形へと変遷を遂げてきたのです。
これが以前使っていたコールゲートの残骸。
昔は今のように水路の表面が覆われておらず、木の葉や石などが落ちて水が流れなくなることが多かったため、雨が降るごとに地域の方が見回りをしていたそうです。
車は入れない道なので、資材は全て人力で運びました。
こんなに大きな石もヒトの手で運んできたとは、びっくり!
約1時間半歩き、ついに左京地区の水源地に到着です。
このバルブで水量を調節します。
折り返し、スタート地点まで戻った後は車で移動し、
更に水路の通り道(田んぼまでの道)を案内してもらいました。
こちらは昭和7年の工事で作った分水口。
田本地区の中でも西と東の水田面積に応じて流す水の量を分け、
時間を決めて配水していたそう。
特に7~9月は田んぼ作りで水が必要不可欠となるため、
限られた水源を公平に行き渡らせるための「番水(ばんすい)」と呼ばれるシステムです。
左右中央と水路の幅が異なることが分かります。
この幅で、行きわたる水の量を調整しているのです。
あさぎり館に戻ってきてから、改めて資料を見ながら説明をしていただきました。
田本井水路の歴史が詳しくまとめられている資料を見せていただきました。
しっかりと文書として残してこられたことからも
昔の方々が思いと力を込めて行ってこられた事業だということが伝わってきました。
資料の中に出てくる方は、知っている方のお爺さん等も多くいて、
遠い昔の出来事ではなく、今の自分たちにつながっていることを感じられ、
努力と苦労が目に浮かぶようでした。
参加者の感想
今回の田本井水歩きでは、山奥のゆるやかに上る坂道をゆっくりと水源に向かう道中で、井水の歴史、その横で行われてきた実際の生活をじっくりと聞くことが出来ました。『私たちの先祖の力の強さ』を感じられるとても貴重な時間でした。
また、気になることがあって、一緒に行ってくださった地域の先輩方に質問をすると「質問の答え」プラスそこからまた違う「興味をそそる話」を話してくださって、また質問をしてどんどん話が広がっていくのが楽しくて!また、今回のような泰阜村を歩く企画が出来たら参加したいです。(S・S)
実際に歩きながら、実際の場所で当時の話を聞くことで、昔の人たちの暮らしや思いが少し感じられたように思います。田本地区のみなさんで「何とか水をひいてこよう!!」と盛り上がり、毎日力を合わせて頑張ったのだろうな。想像できないくらい大変な仕事だったと思うけれど、やりがいと達成感もあったのだろうな。それが、今の泰阜村の人たちのつながりにつながっているのかなぁ…と。
また、他にも多くある、泰阜村の古道を歩きに行きたいです。(栃城から旧泰阜南小まで子どもたちが歩いた道、平島田から左京までの道、稲伏戸から千代への道など)(A・O)
気軽な気持ちで参加しましたが、とても内容が濃くておもしろかったです。地域の方から詳しく教えてもらいながら歩いていると、当時の情景が目に浮かぶようで、改めて今の私達の暮らしが先人たちの苦労の上に成り立っていることを実感しました。井水路に限らず、旧道や道ばたの石像など、村で暮らしていて気になるものは沢山あります。きっと村にずっと暮らしていても土地のことをあまり知らない方、気になる方がいらっしゃると思うので、今回のような企画を更に他の人たちも巻き込んでできたらいいなと思います。(T・K)